空海の宇宙観その4 すべては繋がっている
その1。
この宇宙を構成している全ての要素は、
互いに混じり合い、また常に融合し合っている。
空海の宇宙観その3では、物質はすべてエネルギーであるとお話ししました。
それを頭に置きつつ(一旦忘れてもかまいません。)
もう1度この訳文を考えてみましょう。
宇宙に存在している、全ての要素。
それは、そこに存在しているということであり、かつ、宇宙そのものを構成している、ということです。
それは、宇宙の一部であるということ。
一部でありつつ、その一つ一つが宇宙そのものである、ともいえます。
そしてそれらの要素は、常に互いに融合したり離れたりしていて、
互いがすべて繋がりあった存在、だということです。
元々皆さんもイメージしやすいであろう、物質を細かいレベルで見た場合の原子の状態をイメージしてみてください。
要素とは、原子そのものだと考えてみていいと思います。
原子のイメージでみてみれば、それらが互いにくっついたり離れたりして様々な物体や気体やあらゆるものを形どっています。
私たちが普段目に、手にしているあらゆる物体、そして生命体(身体など)も、
固定した状態の物という訳ではありません。
量子レベルの細かい世界でみてみれば常に原子同志がくっついたり離れたりしています。
どんなに硬い金属も、長い時間をかけて腐食したり壊れていきますし、
私たちの身体も、常に一定の細胞で成り立っているわけではなく、
常に栄養素や他のものを取り入れ、また排出して、ある程度一定の形を取っているということです。
(身体のあらゆる細胞、骨なども数年で全ての細胞は入れ替わっているということです。)
そしてたとえば。
私たちの排出したものは摂取した栄養素の残りかすだけではなく、老廃した細胞のかけらなども含まれています。
それらは下水として排出されていく中で、色々な成分に分解され、
また自然に戻って行ったり、また巡りめぐってその成分が(野菜となったり水となったり、
また何かの素材となって)私たちの元に帰ってくることさえあるでしょう。
長い眼で見てみれば、生命体や物質(と普段私たちが分けて考えているもの)も、
すべて同様に繋がっているのです。
そして、空海の言うには、
思考や意識、精神など、
私たちが普段、物質と分けて対極的に考えている様なことも
同様にこの宇宙の要素として含まれているのです。
これは、量子力学の世界や、
また脳科学、細胞学のジャンルなどで実際に分かって来ている事柄です。
(けれど、まだ分かっている途上であり、これからもっと分かってくると思います。)
能のことでいうと、
脳で何かを考えると、何らかの脳波が発せられます。
脳波とは電気信号で、波長を持っています。
電気信号のやり取りとは、脳神経細胞間で神経伝達物質と呼ばれる化学物質が
分泌されたものが受け取られていくことで行われています。
その神経伝達物質とは、グルタミン酸やドーパミンといったものです。
原子レベルで言えば、脳で考えていることもこうした原子のくっつき合い離れ合いの繰り返しをしているということで、
まさに要素が繋がっているということなのです。
意識、心、そして脳で考えるということの区別はまだ難しいことです。
けれど空海の目線で見てみれば(おそらく)皆同様なことで、
そうした目に見えない意識のことも、何も発生してない訳ではなく
実際に原子が動いているということなのです。
つづく。。!
文: 満ちる